八王子怪談
なんかでも、あれなんですよねえ。考えてることとか、大げさに言うと、アイディアですかね。
散歩とかしてるとよく思い浮かぶんですけど、こうしてパソコンの前に座ると、うまく書けない、みたいな。
でも、そんなこと言ってられない。わたしはアマチュアエッセイストなのだ。
それはそれとして、わたしの親友(のうちの1人)だった、ケー(過去記事「なあ、ケーよ」その他参照していただけるとわかりやすいかと思います)から、その、巨大教団、勧誘直後に聞いた話なんですけどもね。
そのころは、何人かが集まって、お仏壇に向かってお経をあげる、という行為が盛んだったわけです。
いえ、それ自体はわたしは今でも否定しません。
そういった行為を重ねて、神的、仏的、不可思議な現象が起きたとしても、自己暗示も含め、それはそれであってもいいんじゃないかな、とは、思います。
まあ、わたしの言いたいことはここから先です。
学生か、社会人になりたてのくらいの年代の青年たちが、一心に、仏壇に向かってお経をあげてたわけです。
ここは、わりと山や盆地から近い一軒家。
すると、窓をたたく者がいる。
しばらく放っておいたが、だんだん激しくなる。
「なんだよ、こんな時間、こんな時に」
この家に住んでいるエーくんが、そういいながら窓を開けようとする。
「(開催場所の)きみの友だちなんじゃないか?」
先輩のビーさんがそう言う。
「でも、先輩、おかしいですよ。それだったら玄関でピンポンするのがスジじゃないですか?」
「それもそうだな。まあとりあえず開けてみたら?」
言われるまでもなく、エーくんは開ける。
するとそこには、血まみれの落ち武者たちが、ずらーっと、数百人並んでいた!
腕や足、首が切り落とされた者、目がつぶされてる者、弓矢があちこち鎧のすき間に刺さった者たち!
「わ~!!!」「おごわ~!!!」
エーくんたち全員は、そのこの世のものとも思えない、すさまじい光景に不協和音の絶叫をあげた。
「窓閉めろ、窓!」
慌てて窓を閉めたが、幽霊だったらそんなもの突き抜けてくるだろう、でも、閉めずにはいられなかった!
「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経!」
だれかが仏壇に向かって、怒鳴るようにして唱え始めた。みなもそれに倣う。
窓をたたく音はより激しさを増していく。全員が一心になってお経をあげた、あげ続けた。
やがて、いつの間にか、窓をたたく音が止み、みんなで恐る恐る窓を開けてみると、そこにはもう、誰もいなかった……。
あの落ち武者たちの霊は、時空を超えて、おれたちのお経を聞きに来たのだろうか。
そのあとの、なんの痕跡もない静寂は、少しはかれらの慰霊になったのだろうか。
ここは八王子。昔、城があったところから近い。