想い出のカラオケボックス
だいぶ前の話。
その夜、わたしは彼女といっしょに、多少粗末な造りのカラオケボックスの一室にいた。そこはもう何度も来ていた、少しはなじみのある店だった。
小さなガラステーブルを挟み、彼女と対面してイスに座る。彼女の背後にはすぐ壁があり、そこには窓がついている。
かわりばんこに歌い、たしかわたしが、英語の歌を歌っていたときだったように思う。
それまで唄本のページを繰っていた彼女が、不意に、
「キャー!」
という悲鳴を上げた。
日ごろ割と冷静な彼女にしては、めずらしいことだったので、少しびっくりしたわたしは、
「どうしたの?」
と聞く。
彼女は自分の両肩を抱きながら、ガタガタ震えている。その大きなつぶらな両の瞳には、涙が光っていた。
「今、いきなり両肩つかまれたの、誰かに!」
「は? なに言ってんの? あなたの後ろに誰か隠れてられるようなスペースなんかないじゃない? ……はは~ん、そういっておれを担ごうとしてるのね? うまいなあ。でもそんな単純な手には引っかからないよ」
「ホントだよ! 怖いよ、ピキューちゃん! 席、代わってよ!」
彼女の真剣なまなざしは、ウソをついているようには見えなかった。
「いやだよ、おれも怖いもん! うそうそ(笑) ああ、いいよ。じゃあ代わろう。こっちおいで」
で、席を交換する。
念のため、窓を開けてみたが、至近距離に隣のビルの外壁が、無愛想に立ちふさがってるばかりだった。
その後、彼女も少しは安心したのか、気を取りなおして歌い始めた。
わたしの肩までもつかもうとする、得体の知れない存在は、最後まで現れることはなかった。
「後で、勘定のときに店のヤツに聞いてやろうか? この部屋でなんかあったのか、とか」
そう言ってみたが、彼女は首を横に振った。思い出したくもない、というような感じで。
勘定を済ませ、店を出る。
小雨がけぶってくる中、いつもはわたしなのだが、この夜は彼女のほうから、身をすり寄せるようにして、そのまま歩いた……。
新年明けましておめでとうございます!
本年もよろしくお願い申し上げます。
ちなみに、タイトルがまぎらわしいかもしれませんが、
「想い出のエアポート」(参照していただくとありがたく思います)
のときの彼女とは(国籍も)違う女の子です。
え? 白人系かアジア系かって? それは、ヒ・ミ・ツ!(バカじゃねーのおれ!笑)
どーでもいーよそんなの!ってか? 失礼しやした。まあ、蛇足ってことで。
その夜、わたしは彼女といっしょに、多少粗末な造りのカラオケボックスの一室にいた。そこはもう何度も来ていた、少しはなじみのある店だった。
小さなガラステーブルを挟み、彼女と対面してイスに座る。彼女の背後にはすぐ壁があり、そこには窓がついている。
かわりばんこに歌い、たしかわたしが、英語の歌を歌っていたときだったように思う。
それまで唄本のページを繰っていた彼女が、不意に、
「キャー!」
という悲鳴を上げた。
日ごろ割と冷静な彼女にしては、めずらしいことだったので、少しびっくりしたわたしは、
「どうしたの?」
と聞く。
彼女は自分の両肩を抱きながら、ガタガタ震えている。その大きなつぶらな両の瞳には、涙が光っていた。
「今、いきなり両肩つかまれたの、誰かに!」
「は? なに言ってんの? あなたの後ろに誰か隠れてられるようなスペースなんかないじゃない? ……はは~ん、そういっておれを担ごうとしてるのね? うまいなあ。でもそんな単純な手には引っかからないよ」
「ホントだよ! 怖いよ、ピキューちゃん! 席、代わってよ!」
彼女の真剣なまなざしは、ウソをついているようには見えなかった。
「いやだよ、おれも怖いもん! うそうそ(笑) ああ、いいよ。じゃあ代わろう。こっちおいで」
で、席を交換する。
念のため、窓を開けてみたが、至近距離に隣のビルの外壁が、無愛想に立ちふさがってるばかりだった。
その後、彼女も少しは安心したのか、気を取りなおして歌い始めた。
わたしの肩までもつかもうとする、得体の知れない存在は、最後まで現れることはなかった。
「後で、勘定のときに店のヤツに聞いてやろうか? この部屋でなんかあったのか、とか」
そう言ってみたが、彼女は首を横に振った。思い出したくもない、というような感じで。
勘定を済ませ、店を出る。
小雨がけぶってくる中、いつもはわたしなのだが、この夜は彼女のほうから、身をすり寄せるようにして、そのまま歩いた……。
新年明けましておめでとうございます!
本年もよろしくお願い申し上げます。
ちなみに、タイトルがまぎらわしいかもしれませんが、
「想い出のエアポート」(参照していただくとありがたく思います)
のときの彼女とは(国籍も)違う女の子です。
え? 白人系かアジア系かって? それは、ヒ・ミ・ツ!(バカじゃねーのおれ!笑)
どーでもいーよそんなの!ってか? 失礼しやした。まあ、蛇足ってことで。
スポンサーサイト