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人間離れスリッパ

 今からウン十年前のこと。
 
 わたしは友人と共に、わたしが卒業した小学校へと向かっていた。

 わたしとその友人が、10代後半くらいだったころだと思う。
 
 わたしの卒業した小学校は、いわゆる「おばけが出る」学校として、近隣では、知るひとぞ知る、知らないひとは全く知らない程度に有名だったらしい。
 
 しかしまあ、怪談ネタはどこの学校にも転がってるものだから。

 「今、昼間だし(ちょっとした肝だめしがてら)見に行ってみようぜ」
 
 どちらから言い出したか覚えていないが、その言葉どおり実行してみることにした。
 
 その日はたしか日曜日だった。
 
 このころは、まだ学校にまつわる凶悪犯罪というのがそれほどなかったか、校門が開いていたりして、わりあい開放的だったような気がする。

 校門を抜け、下駄箱の大部屋に入る。
 
 そこへ、タイミング良くというべきか、一人の教師であろう女性が通りかかった。

 「何かご用ですか?」
 
 と、女性。わたしは頭の中で言うべきことを整理した後で、

「実はぼくたち(厳密には友人は違う)この学校の卒業生でして、つい懐かしくなって立ち寄っちゃいました。ついては、少しでも校舎の中を見学させていただけるとありがたいのですが…」

「…ああ、そうですか。べつにかまいませんよ。自由に見学なさってください。ただ、お帰りになる時は職員室にいるわたしか、校庭で運動しているもう一人の先生かに、声をかけていってくださいね」
 
 われわれが、物を盗んだり壊したりしそうにないと判断してくれたのか、女教師は親切にそう言ってくれた。
 
 礼を言い彼女と分かれて、教室棟に向かう。

  これだけだと少しわかりにくいと思うので補足する。
 
 この学校はほんの少し変わった造りで、ふつうの教室と、校長室や職員室や理科室などと校舎が2つに別れているのである。
 
 そしてそれらを結ぶ連絡通路がある。
 
 上から見ると、アルファベットの「H」に似ている。
 
 教室棟には、西、中央、東の3つの階段がある。
 
 この東階段だけがなぜか、他のとは異なる色で塗装されている。
 
 この学校の心霊スポットの1つとされているのだ。
 
 その伝説によると……いや、それは次の機会にゆずるとする。今回の命題から外れるのと、長くなりすぎるかと思うので。
 
 まあ、でもその時も、その階段に立ち寄り、もう何度も友人にも説明してはいたが、あえて現場で復習、復唱(解説)した。

「本当にそんなことあったのかよ」

 (それを終えた後で)とは、いつもの友人の弁。忘れているわけではなく、恒例行事みたいなものだ。
 
 いくつかの、わたしにとっての馴染みだった教室、階段を、想い出話に花を咲かせながら渡り歩き、そろそろ帰ろうか、という時だった。
 
 階段を下り、一階の廊下の角を曲がったあたり。

 われわれが通ってきた道の遥か(オーバーだが、死角が多く良く見えなかった、ということ)後方から、誰かのスリッパのような足音が聴こえてきた。
 
 外界はともかく、校舎内は静寂に包まれているのだから、よく聴こえても不思議はない。

「…ほう。おれらの他にも誰かこの中にいて歩きまわってるのかな」
 
 わたしがそう言うと、

「いや、そんな(物好きな)のおれらくらいしかいないだろ? さっきあの女の先生が言ってたじゃん。『今、わたしともう一人の先生しかいない』って」

「それもそうだな。……じゃあ(あの足音)誰だろ」

「おれが知ってるわけなかろ。だいたいおまえの母校じゃんかよ」
 
 それはあんまり関係ないと思うがな……そんな会話をしてる間も、足音は規則正しく近づいてくる。
 
 ……だが、よく聴いてみると、だんだん音の間隔が狭まってきていた。
 
 ちょっと怖くなってきて、「誰かいるんですか?」ともなぜか訊けなくなってしまった。

「パタ……パタ……パタ」

「パタ…パタ…パタ」

「パタパタパタパタパタ」 !!!
 
 どんどん、どんどん速くなる!われわれは一目散に逃げた。
 
 後半の方は明らかに人間離れした速さだった!どう考えてもあれはバケモノの脚力だ。
 
 だってそうではないか? スリッパばきで滑りやすい廊下で、全力疾走すれば、そのうち転倒するのが関の山だし、だいいちスビードが今風に言うと「ハンパねえー!」って感じだったのだ。
 
 走るわれわれの後を追って、目に見えないバケモノも次の曲がり角に差し掛かろうとした瞬間……!
 
 フッと足音が突然消えた。
 
 自分たちの足音とバケモノのそれとの聞き分けはつく。
 
 われわれは足を止めた。もう追ってきそうになかったからだ。
 
 しかしどういうことだろう? わたしと友人の集団幻覚(幻聴)とはとても思えない。
 
 休日の学校(特にその学校)というのは、ある意味、神社仏閣のような禁断の聖域で、ちん入者がいたら、守り神かあるいはそれに匹敵する存在が、追い出してしまおうとするのではなかろうか?
 
 わたしはそんなふうにも考えてみた。


 「あら、もういいんですか」

 「ええ、ありがとうございました」

 「懐かしかったでしょ」

 「……はい。それはもう。……ところで、あの」

 「はい?」

 「いえ、なんでもありません。ありがとうございました。失礼します」
 
 その後の職員室にて。
 
 先ほどの女の先生に、あいさつして、学校を後にした。
 
 さっきの出来事をよほど言おうかと思ったが、どうせ信じてくれないだろう。
 
 あるいは何か知っているのかもしれないが、それを見ず知らずのわれわれに素直に話してはくれないだろう。
 
 まあ、いいか。でも、今のおれなら訊けたな、と思う昨今。その先生はなにも知らないと答えたとは思うけど。

 
 と、いうわけで、このわたしの学校怪談、もうふたつみっつ、ネタがありますので、不定期&一話完結で、続きます。

 
 ヨロピコ。 
プロフィール

ピキュー

Author:ピキュー
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当方、平々凡々の、バツゼロ中年男です。
アルコール依存症です。左利きです。

 読書、映画鑑賞、散歩(スロージョギング、簡易(?)スクワット含む&エアなわとび)、宗教、競馬研究(専門紙名にあらず)等、型にはまった趣味しかありません。
マンガ全般、それと、もともと好きだった、ハードではなく、ソフトな感じのSF、ミステリー、実話怪談などが多いですかね。それと、自己怪談&SF (そんな日本語あるのか?)? 夢日記を、物語風に書くこと。宗教といっても、特定の宗教に肩入れはしません。職業、スリーサイズは、ヒ・ミ・ツ!うふ。気持ちわる!
 
こんなところかな。よろしくお願い申し上げます。

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